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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(あ)2180号 決定 1954年12月02日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人等四名の上告趣意第一点は、違憲をいうが、原判決の維持した第一審判決の判示に副わない事実関係(同判示は公職選挙法一三八条二項の禁止行為を認定したもので、所論のごとく同条一項の禁止行為を認定判示したものではない。)を前提として法令違反を主張するだけで原審が良心に従って独立して職権を行わない事実の主張並びに証拠が存しないからその前提を欠くものであり、同第二点は、単なる法令違反の主張(略式命令は、公訴の提起と同時になされた略式命令の請求につき、裁判所が法律上これが命令をすることができ且つこれをすることが相当であると思料するときにするものであって、公訴事実は、略式命令の請求と同時に特定し、検察官は法定の場合の外訴因の変更又は追加をすることができないものであるから、罪となるべき事実、適用した法令等を記載した略式命令の謄本が被告人に送達されたときは、被告人は起訴状の内容を確知し得るものである。されば、略式命令の謄本が略式命令の請求と同時になされた公訴の提起後二箇月以内(昭和二八年法律一七二号施行後は刑訴四六三条の二により四箇月以内)に送達さえすれば、被告人から正式裁判の申立があっても、重ねて起訴状の謄本を送達する必要がないものと解するを相当とする。この場合右法律施行後の刑訴四六三条四項の適用のないことは法文上明白であり、また、右四六三条の二の規定との権衡上右条項の準用ありとすることも妥当ではない。従って、略式命令の請求後二箇月内に略式命令の謄本が被告人に送達されたこと記録上明らかな本件については、所論の違法は認められない。)であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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